今回はブラックホールに続いて宇宙のお話。
宇宙には奥行きがあるのは当たり前ですが、今日は「夏の大三角」でその宇宙の奥行きを実感してみましょう。
夏の大三角
「夏の大三角」とは夏の夜空に目立つ明るい星を3つ結んでできる三角形ののことです。
小学校の理科で教わるので日本人にはとてもなじみ深い夏の夜空のシンボルです。さらにはどんな星で構成されているのかというのも、日本のポピュラーな曲の歌詞にもあるように知っている方も多いかと思います。
「あれがデネブ、アルタイル、ベガ」
君は指さす夏の大三角、覚えて空を見る
やっと見つけた織姫様、だけどどこだろう彦星様
これじゃ独りぼっち
上記はsupercellの「君の知らない物語」という曲の歌詞の一部です。
そうです、夏の大三角はデネブ、アルタイル、ベガの3つの星で形成されています。
またベガは織姫、アルタイルは彦星と、七夕の物語の主役としても親しまれています。
星の本当の距離
ここからが本題。
私たちが地球上から空を見上げた時には夏の大三角の3つの星はどれも同じくらいの輝きで同じくらいの大きさに見えると思います。それは、そう見えるだけであって地球からその星までの距離にとても大きな差があるんです。
実際どれくらい違うかというと、一番近いアルタイルが地球から約17光年、その次がベガで約25光年、そしてデネブはなんと約1800光年です。
ピンとこないかと思いますが、1光年は光の速さで1年かけて進む距離のことでkmに換算すると約9,500,000,000,000kmです。大きすぎてこれもピンときませんね笑
つまり一番近いアルタイルですら地球から約161,500,000,000,000km離れていてることになります。
それでも十分遠いですが、問題はデネブ。km換算で実に17,100,000,000,000,000km。
よくわからないので、簡単に言うとデネブはアルタイルよりも100倍以上遠くにあるにもかかわらず、他と同じくらいに輝いて見えるということです。
星の名前 | 地球からの距離 | 太陽比 |
太陽 | 149,600,000km(0.00001581光年) | 1 |
アルタイル | 17光年 | 1,079,545 |
ベガ | 25光年 | 1,587,567 |
デネブ | 1800光年 | 114,304,813 |
さらに太陽と比べるとよりその奥行きを感じることができると思います。デネブは太陽よりも1億倍以上離れた距離にあります。
なぜ同じ大きさに見えるのか?
それほど地球からの距離が違うのになぜ同じ大きさに見えるのかというと、単純に星そのものの大きさと明るさが全く違うからです。これは容易に想像できますね。
分かりやすいように太陽と比較した表を作りました。
星の名前 | 直径 | 太陽比 |
太陽 | 1,392,700km | 1 |
アルタイル | 2,532,300km | 1.8 |
ベガ | 3,286,500km | 2.3 |
デネブ | 282,450,000km | 202.8 |
デネブは何と太陽よりも約200倍大きい星なんです。
しかし、大きさと明るさは比例しません。大きくても暗い星はたくさんあります。
ではデネブはどうなのかその明るさも見ていきましょう。
星の明るさ
星の明るさを理解するうえで重要なのが「等級」です。
もともと空に肉眼で見える星を明るい順番に、1等星、2等星、3等星、4等星、5等星、6等星と6つに分類していました。
夏の大三角の3つの星のような最も明るく見える星を1等星と呼び、目に見えるぎりぎりの星を6等星としていました。
現在ではより細かく「等級」という形で分類されています。この等級が小さいほど明るく、大きいほど暗いです。等級はマイナスにもなります。
具体的な等級の話ですが、等級が1.0小さくなると2.5倍明るくなります。例を挙げると、、、
1.0等星の星Aと、3.0等星の星Bがあったとします。その等級の差は、
3.0等級-1.0等級=2.0等級
1等級ごとに明るさが2.5倍違うので、
2.5×2.5=2.5の2乗=6.25
つまりAはBよりも6.25倍明るいということになります。
ここで注意してほしいのが等級とは見た目により分類されているため、実際の星の持つ明るさとは異なるということです。
実際の星の持つ明るさのことを「絶対等級」といいます。絶対等級も基本的には上で説明した等級と性質は変わりません。
では夏の大三角の話に戻ってそれぞれの星の等級について見ていきましょう。
星の名前 | 等級(実際に見えている明るさ) | 絶対等級 |
太陽 | -26.8等級 | 4.8等級 |
アルタイル | 0,77等級 | 2.21等級 |
ベガ | 0.03等級 | 0.58等級 |
デネブ | 1.25等級 | -8.73等級 |
実際に目で見える明るさはだいたい0~1等級くらいで、むしろデネブは3つの星の中で一番暗いですが、注目すべきは右側の絶対等級。
太陽は地球からの距離が非常に近い(天文学的に見て)ため-26.8等級という数値ですが、太陽の本来の明るさである絶対等級は4.8等級と、宇宙全体でみると大して明るい星ではないです。それに比べて、アルタイルは2.21等級、ベガは0.58等級とかなり明るいです。
そしてデネブ、-8.73等級ととんでもない明るさを持っていることがわかります。
これはあくまで参考程度の数値ですが、太陽と比較して計算すると、、、
太陽とデネブの等級の差は、
4.8等級-(-8.73等級)=13.53等級
1等級につき2.5倍の明るさの違いがあるので、
2.5の13.53乗=約240,000
つまりデネブ本来の明るさは太陽の約24万倍明るいということになります。
宇宙は奥行きのある3次元的空間
基本的には私たちが空を見上げた時に明るい星ほど地球からの距離が近いと考えてもいいでしょう。逆に言えば暗く見える星ほど遠くにあるということです。つまりデネブのような遠くにあっても他の1等星と同じくらい明るいく見える星というのは珍しい星とも言えます。
そのことを知ったうえで夜空を眺めたら、今まで平面に見えていた星空も、本当は非常に奥行きのある広大な3次元的な空間だということを実感するのではないでしょうか。
この記事によって皆さんの星の見方が少しでも変わったら嬉しいです。
※この記事の星の距離などの数値は文献によって違ったりするので、参考程度に考えてください。天文学的話になると細かい数値はどうでも良くなりますが笑